席上、来賓として木寺大使が挨拶。
今年4月ごろから「日中間では対話の機会が徐々に増え(中略)、経済についても、交流をどんどん進めるべきであるとのメッセージが出てきた。日中関係を発展させる上で、日中経済交流の果たす役割の重要性はますます高まっている」と日中関係の回復傾向と、経済をはじめとする日中交流の重要性を指摘。
その上で、こうした経済分野における関係者の活躍や「人の輪」が、「日中両国が将来にわたって安定した関係を築くための基礎」だとして「これからも日中間の『架け橋』として活躍されることを期待している」とエールを送った。
木寺大使の挨拶(抜粋)は以下の通り。
――私が一昨年の12月に着任して1年10ヶ月になろうとしております。着任以来、14の地方に出張し、30以上の日本企業の工場を拝見して実感しておりますのは、日中関係の中でも経済関係が大変重要であるということです。日中の経済関係は、貿易額にして3300億ドル、2万3000社の日系企業が活動し、1000万人以上の雇用を創出しています。日中の経済関係はそれほどまで深まっており、日中双方にとって大変な重みのある関係になっているのです。
依然として政治関係が厳しい状況に変わりはありませんが、本年4月頃から、日中間では対話の機会が徐々に増え、青少年交流や地方間交流が回復基調にあります。経済についても、交流をどんどん進めるべきであるとのメッセージが出てまいりました。日中関係を発展させる上で、日中経済交流の果たす役割の重要性はますます高まっています。
本日は、中国ビジネスの最前線でご活躍されている三井化学株式会社中国総代表の得丸様にご講演いただき、大変うれしく思います。
また、日本僑報社から出版される『日中関係は本当に最悪なのか? 政治対立下の経済発信力』の執筆者の方々からも貴重な中国での経験をお話いただきます。この本には、私の紹介により蘇州石川制鉄有限公司の塩谷外司(しおたに・がいし)董事長も寄稿されています。この方は、中国の高速鉄道に使われるレール固定金具をはじめ、多様な製鉄の部品を生産する工場を経営されており、中国の市場に受け入れられ、しっかりと根を生やしてビジネスをされておられました。
本日は本の出版にあたりご尽力された、日本僑報社の段躍中編集長もいらっしゃっていますが、こうした「人の輪」をどんどん広げていっていただきたいと思います。
このような「人の輪」や経済分野における皆様のご活躍が、日中両国が将来にわたって安定した関係を築くための基礎となっています。これまでのご努力に深く感謝いたしますとともに、これからも日中間の「架け橋」としてご活躍されることを期待しています――。
以下は、10月20日付「日経中文網」が報道した中国語記事の和訳。
「中日関係は本当に最悪の時期なのか?」
現在の中日関係は最悪の時期だといわれるが、本当にそうなのか? 在日華僑が経営する日本僑報社がこのほど、日本で出版販売した『日中関係は本当に最悪なのか?』(日本語版)という書籍は、どうやら別のある答えを提示しているようだ。
統計によれば中国には現在、2万社を超える日系企業が存在し、約1000万人の雇用を創出している。本書は中日間でビジネスにかかわる32人が執筆。その中には、日本の大手企業の在中国責任者のみならず、中国の高速鉄道に使われるレール固定金具を生産する工場経営者、さらに有機野菜、環境保護、高齢者介護などの分野で新たな商機を求める日系企業の経営者などがいる。ビジネスの視点から異なる分野で、中日ビジネス第一線の生き生きとしたシーンをそれぞれにとらえている。
各種の世論調査が中日民間感情の悪化を示しているが、北京でこのほど開催された本書の出版記念会の席上、元駐大阪中国総領事の王泰平氏は、「中国の民間で培われた中日友好感情はさほど悪化していない。国際関係や経済力の変化によって、古いバランスが壊され、新しいバランスがまだ形成されていないのだ」とその見解を明らかにした。
日本僑報社の段躍中編集長は「『日中関係は本当に最悪なのか?』の日本での出版が、日本社会のよりリアルな中国理解のためになることを望んでいる」と語った。
日本僑報社は2013年にまた、中日のジャーナリストが中日関係をとらえた『日中対立を超える「発信力」』を出版している。